side story [工藤新一の証言]


 くろばかいとは、ほんとーににぶちんだ。
 オレも相当にだけど、輪をかけて鈍い。

 ……ちくしょう。









 ばーか、ばか。
 どーして気付かないかな、このトウヘンボク。
 オレはいつだって本気だし。
 誰にだってあんなに無防備なわけじゃないし。
 聞かされた時は血の気が引いたけど、あんなこと誰にでもするわけじゃない。

 そこんとこ、わかってんのかよ、バ怪盗。

 オレとオマエが積み重ねてきた探偵と怪盗の対決は、オレの想いを支えるに足るコトだって、どーして気付いてくれないんだよ。
 オレは大事なコトを間違えたりなんて、絶対しない。

 だから、なあ。
 そろそろ気付いて?

「……ばーか」

 オレのコト、アホ呼ばわりする前にさっさと気付けよ。
 触れたいと願うなんて当たり前だろ?
 傍に居たいと願うなんて、もっと当たり前だろ?
 『ともだち』なんて温い関係じゃ足りないって、そう思う俺は欲張り過ぎるのか?

 だって、オレは。

 言えない言葉はまだ胸の中、伝えたい想いも継続中。
 引っ張られた頬の、けれどそれ以外の要因も相俟って火照る熱の意味。向けられる無防備な笑顔に、今日もそれは上がる一方。

 ぎゅっと握った手の暖かさに、新一は少しだけ唇を緩ませる。

 五月の緑の風の中、その手が振り解かれない事が、酷く嬉しくて、切なかったから。




 もう少しだけ。
 もう少しだけ「ともだち」のまま、待ってやってもいいかな、なんて。

 甘いことも、考えてたりするんだけど、な?



2008.12.08.

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