08.息の余韻



「…ぁ、は…」
 どこか熱を持って濡れた吐息に、こくりと喉が鳴る音を聞いたような気がした。
 ぼんやりとした視界の中、ゆるりと背を撫でる器用な手のひらにさえ容易く上がる浅ましい身体の熱。
 それに比例するように相手のものも上がればいいとぼやけた頭の片隅で考えながら、濡れた唇を無意識に舐め取る。
「…なんか、卑猥かも」
 くすり、と唇を端を吊り上げて笑う笑顔はまるで月夜の彼のそれのようで、ぞくりと背筋を駆け上がる衝動を抑えきれない。どっちが、と上がる息の中で叩いた憎まれ口すら笑顔の内に消し去って。
 くちづける。
 食むように、啄ばむように繰り返される触れるだけのそれと、時折奥まで絡めあうような激しいそれを交えて、くちづける。
 交換するのは互いの唾液と、熱と。ひょっとしたら、この心さえも?
 第二釦まで外したシャツの合わせ目から忍び込む指先のすこしひやりとした感触にぴくりと身体を震わせるのすらきっと彼の予想通りで。
 小さく身じろいだ隙に魔術師の器用すぎる指先はプラスチックの釦を軽々と外してゆく。遠慮の欠片もなく忍び込んでくるそれに、染められるように声が色を帯びるのがわかる。
 零れる吐息。
 消えない熱。
「…新一、」
 キスを強請る快斗の甘い声に、震える指先を笑みを刻む唇に這わせる。
 少し乾いて、それでも柔らかく暖かいそれに己の唇にもまた笑みを刻み込み、肩口に右手をかけて体重をかけるように快斗の上へと圧し掛かる。
 右の膝をソファに大きく沈み込ませ、もう片膝は邪魔だとばかりに外に落として。支えきれない身体は、ソファに寝そべる快斗へと無造作に預けたまま。
「かいと」
 くちづける。
 軽く、そして深く。
 繰り返されるくちづけの合間に零れる吐息。

 余韻にするには…まだ、足りない。





2005.03.31.

H O M E *