01.夜の始まり



 自分で望んだ結末だった。
 其処に至る因子として、どのような突発事項が、予想外の事態があろうとも、それでもこの結末を望んだのは自分自身でしかない。
 あらゆるリスクを自分で負うと、子供じみたプライドに縛られたまま、それでも好奇心とほんの少しの正義感でこの現実を招いたのはやはり、自分自身の選択の繰り返しの結果だ。
 手を差し伸べてくれる人が、いなかったわけじゃない。
 優しい言葉をかけてくれる人が、いなかったわけでもない。
 けれど。
 だけど。
「…それでも、この夜の冷たさは自分だけのものなんですよ」
 背中合わせの温もりを、背後の子供と分け合いながら怪盗キッドは自嘲するように呟いた。
 冷たいと感じるのは冷たくあればいいと自分が望むから。
 そうだな、と答える幼児にしては冷えた声色はきっとこの小さな名探偵も同じ道を違う手段で選択した人だからに違いない。
「…真実を偽る事は、苦痛じゃないんだ」
 今の自分には広く感じる、背を合わせた怪盗の体温にコナンは頭上の月を仰ぐ。
 闇を深く感じるのは暗くあればいいと自分が望むから。
 ふざけたような犯行を繰り返しながら、その実誰にも悟らせない真剣な想いを背負った怪盗のそれが、自分と似ているからなんだろう。
 背中合わせに佇む自分たち。
 繰り返される、真実を内包したままの偽りの逢瀬。
 指先一つ触れる事無く、ただ背中合わせの体温と仮初の言葉だけを分け合って、日が昇る前に別れることを繰り返す。

 何でも出来ると思っていた。
 不可能な未来なんてどこにもないと驕っていた。
 けれどこれほど無力な自分は、自分たちは、互いどころか己さえ救えない。
 苦痛を感じるとしたら、偽る事ではなくて、きっと。

「…貴方の夜は、終わりますか?」
「…オマエの夜は、終わるのかよ?」
 交わらない言葉は何のための苦痛か。
 それでも合わせた背中の温もりだけは、きっと真実に最も近い事実。

 終わらない夜の中で、それでも。
 始まりの一歩は、自分自身で踏み出したのだと。

 零れる言葉は、きっとまた…偽りと真実を含んでいる。




2005.05.05.

H O M E *