運命律
触れた先からじわりと滲む熱に、泣きたいくらいの喜びを覚える。
こんな風に触れられる未来を、予測し得なかっただろう過去の己たちの存在が、それを余計に深いものとして位置づけている事も承知の上で。
それでも、じわりとした互いの体温に零れそうになる涙を必死で堪える。
嬉しい、うれしい…泣きたい。
零れ落ちようとする涙を制して漸く浮かべた微笑さえ、すぐにくしゃくしゃになってしまうだろう事も想像がつくけれど。
泣きたい、なきたい…けれどそれよりも、笑いたい。
笑顔で会いたい。
「ねえ」
「なあ」
涙を拭うように寄せた指先とほぼ同時に、己の頬にもつめたい指先が寄せられる。二人して互いのそれを拭い、後から後から零れ落ちる雫に苦笑を漏らす。
「こんな予定じゃなかったけど
「こんなはずじゃなかったんだが」
笑う。唇を湿らす涙の塩味さえ忘れる程に、ここにあるのは歓喜の感情。
君がいる。ここにいる。
この体温が、じわりと沁み込む熱こそが、君の証。
生きている。
「よかった」
「よかった」
まるで二重奏のように重なる台詞は、互いが互いに言いたかった言葉。
ぴたりと重なるそれこそが運命律の成せる業なら、きっとこの出会いもなにもかもが運命だ。自分たちが力ずくで引き寄せた、最強の未来。
「生きてる」
「生きてるな」
とくとくと刻む鼓動の音は、何より確かな安定剤。触れ合った体温の伝わる事さえうれしくていとしくてただ、よろこびだけがここにあって。
「会いたかったよ」
「会いたかった」
こつり、と額を合わせる。絡む眼差しは蒼と藍。ふたつの青の間に遮るものは何もなく、濡れた双眸はゆっくりと瞼の下に消えてゆく。
触れる唇のやわらかさとやさしい体温。やはり沸き起こるのは歓びでしかないから、きっとこの感情の行方はたったひとつ。
涙の味のキスがもたらしたのは。
最強の運命の、幸福確定未来。
2004.11.24.
H O M E *