カウントダウン



 カラダの中で音がする。
 心臓が刻むその音が、迫るリミットを指し示すように。

 上がる息。
 早まる鼓動。
 追い詰められているのが追い詰めているのか、もう当人たちにだってわかるはずない。

 手を伸ばす。
 触れる指先。傷つけあう言葉と態度。
 嘘とまやかしだけで相対することはもはや覆しようもない現実なのに、其処にあるかも知れない真実を求めて足掻く姿は滑稽に相違ないのに。

 愛している、なんて言わない。
 好きだ、なんて思わない。

 たったひとりの存在だけれど、それを支えにしようなんて思わない。手に入れようなんて思うはずもない。
 唇から零れる言葉は刃ばかり、気まぐれに与えられる優しさは何時だって虚構だらけ。
 謎は謎のままでいいなんて、そんな言葉は聞き飽きた。
 ぎりぎりと心をカラダを締め付けるカウントダウンの秒針は、いつだって求めている。あるはずのない真実を。

 嘘でも本当でもない言葉の果てに、突き付けあうナイフの刃の光さえも惜しいと思えるようになるのなら、いっそその言葉で殺してくれればいいのにとさえ、時折思う。

 夜の邂逅。
 月下の逢瀬。
 銃口を向け合う物騒なそれに、だから今夜はひとつだけ『ほんとう』を混ぜてあげる。

 唇を舐める。引き攣りそうになる笑顔を、出来るだけやわらかいものへと保って、切り札の言葉を投げつけてやる。

 どくどくと早くなる鼓動。
 切り刻まれる時間の果てに、この言葉はオマエを殺すのか、それとも俺をこそ殺すのか。

 読めない予想を踏み躙り、狂気のような賭け事をしてみよう。


 さあ、どうする大怪盗。
 俺の告げる真実と引き換えに、オマエが寄越すものは何だ?
 その無形の刃で俺を殺すのか、それとも?


 カウントダウン。リミットブレイク。
 さあ、引き金は引かれた。

 オマエの答えを、俺に寄越せ。



2005.12.01.

H O M E *